トップページへ戻る 



第一部   アルコール依存症 とは
      アルコール依存症とはどんな病気か
      アルコールは麻酔作用・依存性・臓器障害作用をもつ薬物である
      アルコール依存症の診断
      アルコール依存の原因
      アルコール依存症の患者さんはどのくらいいるか
      アルコール依存症の経過
      アルコールで起こる、または悪化する体の病気
      離 脱 症 状 と は

第二部  本人の回復       
第三部  家族の回復
第四部  アダルト・チルドレン(AC)とその回復

第五部  相談先


栃木県立岡本台病院 アルコールセンター発行・アルコール依存症の理解より
                            平成14年6月1日 第三刷
第一部  アルコール依存症 とは 
アルコール依存症とはどんな病気か

 お酒の飲み方のコントロールが効かなくなり、 いろいろな問題が起こってくる病気です。脳のごく一部分の障害であると考えられています。「意志が弱い」とか「だらしがない」ということではなく、 れっきとした病気であることを知ってください。この病気は生涯にわたって治ることはありません。つまり、長期間断酒したとしても、少ない量を上手に飲めるようにはなりません。しかし、 飲酒をやめ続ければ、健康な生活を取り戻すことができます。
   
  アルコールは麻酔作用・依存性・臓器障害作用をもつ薬物である   

 アルコールの正式な名前はエタノールといいます。 麻酔薬に属する薬物です。
 エタノールは脳を表面 ( 外側 ) のほうから麻酔していきます。
 
 まず理性をつかさどる大脳皮質が麻酔されると ほろ酔い状態となり.さらには酩酊状態 (よっぱらい)となります。 この段階では大脳皮質の下にある辺縁系の働きが表に出ていわば 「本能むき出し」となります。泣き上戸・笑い上戸・人にからむ、などの状態です。辺縁系は 怒り・喜び・悲しみといった感情や食欲・性欲・戦いなどの本能を支配しているからです。さらにエタノールをたくさん飲むと.辺縁系も麻酔されて意識がもうろうとして(意識障害)、最後は呼吸や心臓が停止して死亡します。
                             
                  これは生命を維持する脳幹までもが麻酔されたためです。 
                     

エタノールには依存性があります。
依存性とは、ある薬物をくり返し使った場合、「また使いたいなあ」「また飲みたいなあ」という気持ちが自然に起こってきて、その薬物の量を調節したりすることが難しくなる状態です。

代表的なものは麻薬・覚せい剤・シンナー(有機溶剤)などですが、エタノールもこの仲間に入ります。


依存性はアルコール依存症や薬物依存症の患者さんだけの問題なのかというと、そうではありません。社会的に問題を起こさなくとも、くり返しお酒を飲んでいる方にはこの依存性が働いています。たばこやコーヒーなども同じこと、アルコールの依存性によって、多くの方は「習慣飲酒」をしています。習慣飲酒の代表が「晩酌」です。


体質によってはだんだんに飲み方のブレーキが効かなくなり(コントロール障害)、
いろいろな問題が生じてきます。(アルコール依存症)またエタノールには臓器障害作用があり、たくさん飲んでいると、いろいろな病気になりやすいのです。

            アルコール依存症の診断        ページのトップへ      

アルコール依存症かどうかは、飲酒歴を中心とした生活歴(いままでの様子)を尋ねることでほとんど診察できます。以下に当てはまるようであればアルコール依存症の疑いが高いといえます。


    1. 長い間にわたってたくさんのお酒を飲んでいる(長期大量飲酒)
        10年以上にわたって、一日に3〜4単位以上の量を飲酒している。
        女性はホルモンの関係で、もっと早く、少ない飲酒量でも発症します。
        なお1単位とは、清酒1合・ビール大ビン1本・ウイスキーダブル1杯に相当する量を
       いいます。


    2. 飲み方のコントロールが効かない(コントロール障害)
       自分でわかっていてもほどよい量で切り上げることができない・
       いちど飲み出すと止まらない・仕事前に飲む・朝から飲む・
       からだの病気があっても飲む、など、 飲み方が社会的な基準からはずれてくるのが
       特徴です。


    3. お酒による何らかの問題が起こっている(社会適応困難)
        アルコールによって身体・家庭・職場・地域社会などでの問題を
        繰り返している。すなわち肝臓や胃腸の病気・家庭不和、遅刻、欠勤、事故などで
       す。


    4. 身体依存
        酒が切れるとイライラ・発汗・手のふるえ・不眠・幻覚・意識のくもりなどの離脱症状
       が出現します。これが苦しいためにまたお酒を飲んでしまいやすいのです。


     5. γ-GTPが300以上
       γ-GTPはもともと正常な肝臓の中にある酵素ですが、大量飲酒によって肝臓が
      壊れると、血液の中に漏れて出てきます。すなわちγ-GTPが高いことはアルコール
      による肝臓障害があることを示します。


    6. 久里浜式アルコール症スクリーニングテストで2点以上
                            (今日の診断指針 第3版より改変)

          アルコール依存の原因          ページのトップへ   

アルコール依存症は生まれつきの体質(素質)と、長い間多量の飲酒をしてきたこと(環境)の両方によって起こります。高血圧や糖尿病と同じく、一種の生活習慣病です。


            


遺伝的な素質 : 「アルコール依存症になりやすい体質」と考えればよい。
長期大量飲酒 : 毎日3〜4単位以上のアルコールを10年以上飲むこと。女性はもっと短い期間でアルコール依存症を発症する。(なお、1単位とは日本酒なら1合・ビールなら大ビン1本・ウイスキーならダブル1杯にあたる量)

アルコール依存症の患者さんはどのくらいいるか    

非常に多く、患者数は全国で少なくとも260万人と見られています。
しかし専門病院や自助グループなどにつながる患者さんはごくわずかで、大部分は内科・外科などでの治療をくり返しているか、放置されています。なお、専門治療を受けている患者さんは中高年の男性が多いのですが、女性や若年層も増えてきています。またあらゆる職業の人に発症します。
貧しい人の病気だというのは誤解です。当院でも知的職業のかたが患者さんとして来院し、断酒して回復しています。
 
        アルコール依存症の経過             ページのトップへ

アルコール依存症は放っておくと慢性的に進行し、最後は肝硬変や突然死などで死亡します。患者の平均寿命は50歳台といわれています。

飲酒の調節ができなくなっている状態ですから、少量だけ飲むという生活に戻ることはできません。
しかしながら、飲酒を完全にやめ続けることができれば、健康なひとと同じ生活をすることができます。

     アルコールで起こる、または悪化する体の病気  ページのトップへ 

 咽頭 ・ 食道  咽頭癌・食道癌・食道静脈瘤
 胃        急性胃粘膜病変・胃潰瘍・マロリー=ワイス症候群
 腸        吸収不良症候群(栄養失調・下痢)・潰瘍性大腸炎
 肝臓       アルコール性の脂肪肝・肝炎・肝硬変・ウイルス性肝炎
 膵臓       アルコール性膵炎(急性・慢性)・糖尿病
 心臓       高血圧・アルコール性心筋症
 呼吸器     肺炎・結核・気管支喘息
 腎臓       高尿酸血症(通風)・IgA腎症・ネフローゼ症候群
 副腎       高アルドステロン血症
 内分泌(男)  男性ホルモン減少・インポテンツ・睾丸委縮
 内分泌(女)  卵巣機能不全・月経異常・妊娠異常・胎児性アルコール症候群
 造血系     鉄欠乏性貧血・溶血性貧血・血小板減少・白血球減少・
           リンパ球機能不全
 抹消神経系  抹消神経炎(かっけ)
 中枢神経系  ウェルニッケ=コルサコフ病・ぺラグラ脳症・小脳変性症・
           マルキャハァーバ=ビグナミ病・中心性橋髄鞘融解・慢性硬膜下血腫
 運動器系    骨折・大体骨頭壊死・アルコール性ミオパチー

アルコールによって全身が障害されます。
お酒をやめると良くなるものがほとんどですが、ウェルニッケ=コルサコフ病やぺラグラなどの初期は離脱症状と区別がつかないことがありますので、離脱症状(とくに意識のくもり)が出ている場合は専門医療機関に相談するのがよいでしょう。
 
            離 脱 症 状 と は              ページのトップへ

断酒したために生じるさまざまな症状をさします。普通は数日でおさまりますが、重いものは入院治療が安全です。精神安定剤・ビタミン剤などで程度を軽く押さえたり、後遺症を予防したりすることができます。

 
・早期離脱症状 : 断酒後6〜8時間頃から36時間ぐらいまで
  手指振戦(手や体のふるえ)・発汗(あせをかく)・悪寒(さむけ)・不安感・
  焦燥感(あせり)・脱力感・発熱・動悸・嘔気(はきけ)・嘔吐・鳥肌・
  眼振(目玉がこまかく震える)・瞳孔参大(ひとみの黒い部分が大きくなる)・
  けいれん発作・一過性の幻聴(実際には存在しない音が聞こえる)

 
・後期離脱症状 : 断酒後2〜3日目から
  振戦せん妄が起こる。これは、意識のくもりに幻覚・妄想が加わり、落ちつきがなくなる状態
  です。手の震えを伴うことがあるのでこの名があります。


  幻覚とは実際にはないものが見えたり聞こえたりするもので、いろいろな声が聞こえてきたり、ふとんや壁に虫や人の姿が見えたりするものが多いのですが、精神分裂病などと異なり、非常にはっきりと見える幻覚が特徴です。

 
  妄想とは現実にはあり得ないことを堅く信じてしまうことで、「やくざに取り囲まれている」「医者が点滴に毒を入れている」などの被害的な内容がよくみられます。このため内科の病院に入院して酒が切れると、病院の中をうろうろと歩き回ったりすることがあります。意識のくもりがあると、まわりの状況をまちがってとらえることが多いのです。これを見当障害と呼びます。

  たとえば日付や時間がわからなくなったり、自分がいる場所がわからなくなることがあります。病院に入院しているのに自宅にいるものと思いこみ、「これから仕事に行く」と言いながら病室で荷物をまとめるような行動も見られます。
      
第二部へ

 
要約      

ページのトップへ

トップページへ