第二部 本 人 の 回 復
アルコールをやめ続けることの難しさを理解する
専 門 医 療 機 関 で の 診 療
ア フ ター ケ ア
断酒のこつ
第三部 家族の回復
第二部 本 人 の 回 復 |
アルコールをやめ続けることの難しさを理解する |
ひとたびアルコール依存症になってしまうと、酒を上手に調節して飲むことはできなくなります。 つまり、一杯の酒が体に入ると、もはやブレーキが効かない体質になっているわけです。 まずこのことを理解する必要があります。そこで、酒を飲まない生活を続けていくことになりますが、 これがなかなか難しいということを知っておかなくてはなりません。 アルコールは依存性薬物ですから、酒を飲みたいという気持ち(飲酒欲求)は体の中から自然にわき上がってきます。 アルコール依存症になると、この飲酒欲求が突然、非常に強く起こることがあります。その強さは意志の強さなどを はるかに越えたものですので、これを乗り越えるのが大変なのです。さらに、新しい習慣を続けていく難しさもあります。 正月になると多くの人が「今年こそ日記をつけるぞ」と決心しますが、たいていは三日坊主でおわってしまいます。 これは日記を書くことが難しいのではありません。「毎日忘れずに」ということが難しいのです。 断酒もこれと同じで、長く酒をやめようと決心していても、「ついうっかり飲んでしまった」ということはあるのです。 このように、ひとりで酒をやめ続けることはなかなか大変なので、専門病院などで援助を受けながらおこなうとうまくいきます。 アルコール依存症は精神科で扱うことが多いのですが、一般の精神病院ではアルコール依存症の治療を行っている ところは少ないので、専門治療を行っている施設に行くのがよいでしょう。 専門医療機関などは都道府県の精神保健福祉センターや保健所で教えてもらえます。 |
専 門 医 療 機 関 で の 診 療 |
1.初診(初めて病院を受診する) 医療機関によっては予約が必要であったり曜日が限られているところもありますので、あらかじめ病院に ご確認ください。もし患者さんご本人が病院に行くのをいやがる場合は無理矢理連れていく必要はありません。 まず家族だけの相談をお受けください。 患者さんはいったんお酒を切ってから受信するのがマナーですが、岡本台病院の場合は多少アルコールが 残っていても、本人のお話がじゅうぶん伺える程度であれば受診なさって差し支えありません。 しかし泥酔状態では患者さんが本当に治療を受ける意思があるかどうかを確認できないため診察はできません。 2.インテーク面接 臨床心理士やソーシャルワーカーなどがいままでの経過について詳しくお尋ねします。 (1時間程度)秘密は守られ、治療方針を立てる上でも重要であるので事実を正直に述べることが必要です。 3.診 察 医師が診察し、アルコール依存症であるかどうかを診断します。また、依存症について、それがどんな病気であるかを、 また、どのような治療を行うとよいのかを説明します。病院で治療を受けるかどうかは最終的には患者さんに 決めていただきます。また、ご家族には家族教室への参加をおすすめしています。 4.離脱症状の治療 お酒をやめると半日〜1週間ほど脳が一時的な興奮状態となり、不眠・発汗・いらいら・手のふるえなどの 「離脱症状」がよく見られます。程度が軽ければ精神安定剤を飲みながら自宅で乗り切ることもできますが、 意識がもうろうとしたり幻覚が出たりしているような場合、またお年寄りや体の病気がある場合は 数日入院していただいたほうが安全です。 5.合併症(アルコール依存症以外の病気)の治療 多くの患者さんにはアルコールによる肝臓障害・消化管障害・糖尿病などがみられます。 また手足のしびれなどの末梢神経障害や、うつ病などの精神障害を合わせ持っている場合もあります。 これらの治療も同時に行います。症状が重い場合は一時的に内科の病院などで治療を受けていただくこともあります。 6.社会復帰・入院・外来日課
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依存症そのものは完治しない病気なので、一定期間の治療プログラムが終わった後も継続的なケアが必要です。 専門病院へ定期的に通うことと、自助グループへの参加は断酒生活を続ける上で大変有効です。 仕事の再開は断酒生活が軌道に乗ってからが安全です。患者さんにとってお酒をやめていくことは大きなストレスで それに慣れないうちに、いままでの遅れを取り戻そうとあせって仕事を始めると、最飲酒してしまう患者さんがよくいます。 また抗酒剤は3ヵ月〜6ヵ月ぐらいは毎日服用したほうがよいでしょう。 |
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