第三部 家族の回復
    家族が身につけるパターン
    イネイブラーとは
    共依存の特徴(加藤正先生による)
    共依存からの回復
    家族が取るべき行動は?

第四部  アダルト・チルドレン(A・C)とその回復

第三部 家 族 の 回 復

 アルコール依存症は家族のあり方に強い影響を及ぼします。このため、家族関係に
 悪循環が起こり、本人だけでなく家族も苦しんでいることが多いのです。
 
 1.経済的困窮
   飲酒のためにお金が使われ、事件・事故などがあればその賠償などの出費が必要
   です。身体疾患の医療費もかかります。さらに失職すれば収入がなくなります。


 2.暴言や暴力
   アルコール依存症と家族との間で「もう飲むな」「うるさい」といった言い争いが頻繁に
   起こり、暴力に発展することが珍しくありません。家庭は危険な場となり、家族が休息や
   安心感を得ることはできなくなります。


 3.子供の混乱
   子供は依存症者の暴言や暴力によって大きなストレスを受けるほか、依存症者が
   飲酒しているときしらふのときとで意見や態度がまったく異なることが多いため、
   非常に混乱します。両親からの愛情が得られず、情緒的に荒廃していきます。


 4.妻の混乱
   アルコール依存症が病気であることを知らないと、頻繁なトラブルによって依存症者に敵
   意を抱き、絶望感に襲われます。問題への対処に追われて精神的に不安定となり、日常生
   活に支障をきたします。

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家族が身につけるパターン      
        
 1.たび重なる問題への対処に追われ、他のことが考えるゆとりがなくなります。

 2.危機への耐性が生じます。すなわち、重大な状況でも大変なことだと感じられなくなりま
   す。

 3.隠し事が多くなります。家族は周囲に相談できずに孤立します。
   家族メンバーの中でも互いに気持ちを語りあうことがなくなります。

 4.理由を求めます。「自分が至らないせい」「本人の性格が悪い」「嫁が悪い」など、特に
   子供は「自分がいい子でないからだ」と考えやすいのです。

 5.悪循環になります。家族が依存症の起す問題の尻拭いをするため、依存症者は
   断酒する必要を感じないで済み、飲酒が続きます。

 6.責任分担のけじめがあいまいになり、母親が父親の役割を、年長の子供が母親の
   役割を担うようになります。

 7.感情の否認・喪失が起こります。自然な怒りを出せず、自分自身の気持ちがわからなくな
   ります。その結果、正しい判断や気分転換ができなくなります。
   深く考えず、状況に対して反射的に反応してしまいます。

 8.上記の1〜7が生活パターンとして固定化します。    
                              (Be!52号より改変)
                                                       

 
イネイブラーとは


 依存症者本人に対して世話を焼いたり本人を刺激したりして、結果として本人が飲酒
 できる状況を作ってしまうことをイネイブリングといいます。イネイブリングをする人をイネ
 イブラーと呼びます。家族がこの役割をとりやすいのです。
 これらの言葉は米国のアラノン(AI-Anon.依存症者の家族のための自助グループ)で使われ
 始めました。


     イネイブラーの行動                 本人の行動
本人が酔って起した問題の処理をする
(謝罪・弁償・身の回りの世話)   
周りが解決してくれるので、いつまでも
自分の問題に気づかない
⇒再飲酒する。
酒を隠す・捨てる・お金を持たせない・
飲んでいるかどうか見張る
「自分は信用されていない」と思い、
いやな気持ちになる ⇒再飲酒する。
酒をやめるようにと説教する・
「今度飲んだら離婚する」と脅す
内心はまずいことだと思っているので
うるさく言われていやになる ⇒再飲酒

 上のようなイネイブラーの行動は、本人の再飲酒を引き起こします。
 周囲の者としては問題が大きくならないように、また本人が何とかアルコールを
 やめるようにと考えて行動しているのですが、逆にアルコールがやめにくくなるということに
 注意して下さい。

 この場合、周囲がイネイブラーとしての行動をやめると
 問題が大きくなり、本人は断酒せざるを得なくなります。
 イネイブリングをやめることが必要、という点は頭では理解できても、それを実際に行動に移
 すことはなかなか困難です。
 それは、イネイブラーの人が共依存という心理状態になっているからです。
                                       
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共依存の特徴(加藤正先生による)


 1.他人中心の人生を送る
   幸福になるために、「私は○○をしよう」ではなく、
   「相手が○○をしてくれればうまくいくのに」と考えます。相手に幸福になってもらうた
   めに相手がどう考えているか、どう行動するかが気になり、自分のことは常に後回しにな
   ります。「他人が幸福になることで自分が幸福になる」と感じる人が多いのです。


 2.他人をコントロールしようとする
   相手が思い通りに動いてくれないと、「こうするべきだ、こうあるべきだ」と責めたり、
   怒ったり、相手を何とか変えようとコントロールします。


 3.自分と他人の心の区別が不明瞭
   相手の問題を相手の問題としてはっきり区別できず、自分の問題にしてしまいます。
   たとえば相手が落ち込んでいると必死になってその人の気分を変えようとしたり、または
   自分も同じように気分が落ち込んだりします。


 4.一人でやっていける自信がない
   「見捨てられる」ことへの危惧間が強く、
   一人でいるとむなしい感じや不安におちいりやすいのです。
   この背後には、「自分は間違っているのではないか」という意識、
   「自分はここにいる価値がないのでは」という自己否定感や自己評価の低さなどがあり
   ます。自分で自分を好きになれません。


 5.「自分が他人に必要とされること」が必要になる
   自分が乗り出すべきトラブルが生じると生き生きします。
   他人の世話をしていると充実感を感じる人が多いのです。

   「自分を必要とする人が必要」なため、アデクションの問題をもった人に
   ひかれやすいのです。(アルコールやギャンブル依存の人との結婚)。
   一方で相手を信頼することができないため、
   自分がなんとかしなければと必死になります。


 6.葛藤や不安に直面できない
   不安・緊張・苦痛に満ちた生活をしているにもかかわらず、
   自分自身の葛藤や不安に直面することを避けています。
   何も起こっていないかのようにふるまい、相手の問題に対処するためエネルギーを使うこ
   とで、心の奥深くにしまいこんだ不安や苦痛を感じまいとします。
   依存症本人がお酒の問題を認めないのと同様、共依存の人にも「否認」の意識が
   働いています。
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  依存からの回復


 共依存からの回復にはまず自助グループが有効です。同じ苦しみを持つグループで
 率直に自分のことを話すことによって、自分の考え方や感じ方、行動のパターンが
 見えてきます。AI-Anon家族グループ(1950年〜 アメリカ)は家族の自助グループの先
 駆けです。ここでは飲酒者に対して「ガミガミ言わない」ことを目的標としています。
 日本は共依存的生き方があたりまえとされる社会です。
 すなわち自分のことはあとまわしにして「世のため人のために生きる」ということが美徳とさ
 れています。
 例として、テレビドラマには自分を犠牲にして家族や恋人のために生きる主人公が
 よく登場します。しかし、アルコール依存症に関するかぎりは、
 共依存が本人と家族の回復に障害となることを認識する必要があります。


 
家族が取るべき行動は?


 
1.家族も依存症について勉強する・
  本を読んだり病院の学習会などに参加する。また、飲酒するかしないかは本人に
  任せて、飲酒を無理やり止めるようなことをしない。
  たとえば酒を隠す、酒を捨てる、飲まないよう説得する、金を持たせない、など。
  周りがどんなことをしても飲むのがアルコール依存症である。


 2.本人が飲酒した上で起した不始末の尻拭いをしない・

  弁償や謝罪は本人にさせる。職場を休む連絡を家族がしない。手当てや看病をしない。
  とはいえ、実際には家族が動かざるを得ない場合があります。
  たとえば本人を警察に引き取りに行く、連続飲酒状態でひとりで病院に行くことが
  できない、などの場合です。こういうとき、家族が
  「これは本来はイネイブリングなのだ」と頭の中でわかっていれば差し支えありません。


 3.治療を勧めるのは本人がしらふで機嫌のよいときにする・

  その場合、本人を批判するような雰囲気にならないように注意する。
  家族が本人を気づかっているのだということを同時に伝える。
  酔っ払っているときに治療を説得する必要はない。


 
4.家族も自分の楽しみを持つ・
  「このことをしている間だけでも本人のことが忘れられる」というものがあれば理想的。
  家の外に出かけることも大いによい。「そのような趣味は何もない」「そんな気にはとても
  なれない」という人はまず自助グループ(次項)へ参加してみるとよい・


 5.断酒会・AI-Anon(AAの家族会)・病院や保健所の家族のミーティングなど
  
に参加して、ほかの家族の話を聞き、自分でも体験を語る。
  このとき、「飲んでいる人」のことを語るのではなく、「わたし」を主語にして、自分が何
  をしたか、自分がどう感じたかを話すように心がけるとよい。

   

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