第四部  アダルト・チルドレン(AC)とその回復
      アダルト・チルドレンとは何か
      A C は 病 名 で は な い
      アルコール家族の特徴(クラウディア・ブラック 1981)
      ACの特徴(ジャネット・ウォイティツ1983)
      ACOAの役割の類型(C.ブラック)
      ACの回復と成長のため
      自助グループについて

自助グループの歴史
自助グループは何故断酒継続に有効か


自助グループの連絡先

アルコール問題に関する相談先(栃木県内)

第四部 アダルト・チルドレン(AC)とその回復
アダルト・チルドレンとは何か

 アダルト・チルドレンとは、Adult Children of Alcoholics ( ACOA ) の略です。
 アルコール依存症の家族(多くの場合は親が依存症)のいる家庭で育ち、大人になった人を
 さします。アルコール依存症者のいる家庭は家族同士の交流がスムーズでなく、そこで育つ
 子供は何らかの対人関係のゆがみを抱え込むことが多いのです。
 
 この「ゆがみ」はACにとってはある種の「生きずらさ」として自覚されます。この生きずらさの
 原因が、アルコール依存症であった親と自分との関係にあると自覚している場合を「AC自
 覚がある」 といいます。
 
 なお家族にアルコール以外の問題があって、家庭の機能が十分でない家庭で育った子
 供が大人になった人を、ACOD( Adult Children of Dysfunctional Family )といいます。
 ACODの人が自覚する生きずらさは多くの点でACOAと共通しています。   

A C は 病 名 で は な い

 ACは病名ではなく、その人の育った状況や自覚をあらわす言葉です。
 したがって必ずしも医療機関での治療の対象ではありませんし、「大人になりきれないダメ
 人間」を意味するものでもありません。この点、マスメディアが誤ったとらえ方をしている場合
 がありますので注意が必要です。なお、子供時代に虐待などを受け、現在、不眠・フラッシュ
 バック・悪夢・無 気力・ 幻覚などの精神症状がある場合は、まず精神的な治療(薬物療法
 ・精神療法など) を受けたほうがよい場合もあります。

アルコール家族の特徴(クラウディア・ブラック 1981)     

  ソーシャルワーカーで自らもACであったクラウディア・ブラックは、アルコール依存症者の家
 族の特徴をあげ、ACとなる原因を以下のように考えました。

 1.非一貫性・予測不能者
  アルコール依存症者は飲酒したときとしらふのときで言動が異なるため、子供は同じことを
  やってもそのときによって褒められたり叱られたりします。また子供が依存症者と何か約束
  をしたとしても、飲酒のためにそれが簡単に破られることになります。このような状態は子
  供を混乱させます。


 2.情緒の抑圧
  混乱した家庭では子供が日常的に失望感を味わったり、暴言や暴力にさらされ続けると、
  子供の心の中では「いまの気持ちを感じないようにしよう」という「否認」のしくみが働き、
  恐れ・悲しみ・怒りといった自然な心の動きが失われていきます。このことは一見我慢強い
  性格を育てるように見えますが、たとえば成長したのちに心理的な安定を阻む要因となり
  ます。他人に本音を話せないことで非常に無理をした生き方をせざるを得ない点があげら
  れます。


 3.協調の欠如
  健康な家庭では必要に応じて家族同士が協力してことにあたりますが、アルコール家族で
  は依存症者に対してその配偶者と子供が協力して敵対関係を作るという不健康な強調関
  係が作られます。


 4.言語化されない、不公平で硬直化したルール
  「暴力を振るってはいけない」「自由に自分の意見をいってはいけない」「約束が破られて
  も文句を言ってはいけない」などのルールが家庭を支配します。


 5.不適切な役割
  アルコール依存症者のいる家庭では、たとえば父親が飲酒していれば母親が
  それまでの父親役(生活費を稼ぐ・家族の方針を決定する)をやり、年長の子供が母親役
  (弟や妹の面倒を見る)をやるなど、「お世話の流れ」が固定していきます。本来は必要に
  応じて相手の面倒を見たり、見てもらったりということが自由にできることが人と人との健康
  な関係ですが、アルコール家族ではそれを学ぶことができません。

ACの特徴(ジャネット・ウォイティツ1983)           

 教育学者でみずからもアルコール依存症者の妻であったジャネット・ウォイティツはACの特
 徴を以下のようにまとめました。


 1. これでいいという確信が持てない(何が正常かがわからない)


 2. 物事を最初から最後までやり遂げることが困難である


 3. 本当のことを言ったほうが楽なときでも嘘をつく


 4. 情け容赦なく自分に批判を下す


 5. 楽しむことがなかなかできない


 6. まじめすぎる


 7. 他人と親密な関係を持つことが大変難しい


 8. 自分にコントロールできないと思われる変化に過剰に反応する


 9. 他人からの肯定や受け入れを常に求める


 10.他人は自分と違うといつも考えている


 11.常に責任をとりすぎるか、責任をとらなすぎるかである


 12.過剰に忠実である。無価値なものとわかっていてもこだわり続ける


 13.衝動的である。他の行動が可能であると考えずにひとつのことに自らを閉じ込める


   ではACでは具体的には何が問題なのでしょうか。
   それは必要に応じてそれにあった対人関係がとれない点にあるといえます。
   このことは意識的・無意識的に大きなストレスになります。
   ふたたびブラックの研究を見てみます。

ACOAの役割の類型(C.ブラック)         
                      
 1.責任を背負い込むタイプ(リーダーシップ型)
  自ら計画を立てて家事を行ったり年下の子供の面倒を見たりして、責任を負っていくタイ
  プ。
  アルコール家族では両親が果たすべき役割を子供が果たすことが多い。
  しばしば年上の子供がこの役割を取りやすい。
  リーダーシップに優れた大人になるが、何でも無理をして引き受ける結果ストレスがたま
  ったり、他人の指示に従うことができないため衝突しやすい。


 2.受動的に適応するタイプ(引きこもり型)
  家族の混乱の中で、家族の関係から身を引き、争いにかかわるまいとして自分を守るタイ
  プ。夫婦げんかが起こるといつのまにかいなくなって自分の部屋に閉じこもったりする。
  仲間同士のつきあいでも親密さが増すと自ら距離を取って離れていくため友人ができにく
  い。いっけん無気力・無関心に見えるがそうではなく、心の底には周囲に対する恐怖や緊
  張を持っている。


 3.なだめるタイプ(カウンセラー型)
  夫婦げんかなどで家族間の緊張が強いとき、親をなだめることによって家族の混乱を押さ
  えようとするタイプ。親に対して何度も謝ったり、親の愚痴を熱心に聞いたり、冗談を言って
  笑わせたりする。体の病気(心身症)になって親の注意を自分に向けさせることもある。
  自分自身の欲求がわからないため精神的な負担が大きい。


 4.行動化するタイプ(反社会的行動型)
  さまざまな非行や反社会的行動をくり返すタイプ。自分の行動によって自分に注目させ
  る。怒りのコントロールが適切にできない。アルコール・薬物・ギャンブルなどの嗜癖行動
  におちいりやすい。
 
ACの回復と成長のために             

 ACの回復・成長の目標をどこに置くかは難しい問題です。アルコール依存症者本人であれ
 ば断酒の継続がとりあえずの目標になりますが、ではACの目指すべき目標は何でしょう
 か。それは、最終的には対人関係の改善によって日常生活が楽になることでしょう。
 しかしこれは、とりもなおさず人格の完成を目指すことであり、完全な達成は無理です。
 そこで、回復と成長へ向けて努力することそのものが目標なのでは、と考えるひともいます。
 自分をACと認め、体験を率直に語れるようになるだけでも生きずらさはだいぶ軽減します。


 その第一歩としては、やはり自助グループが有効です。
 秘密が守られ信頼できる場で自己を語り続けることによって、自分の対人関係や性格の特
 徴が見えてきます。さらに洞察が深まれば、日常生活から枠が取り払われた感じがして、
 それまでよりも楽に生きている自分が見えてきます。
 全国的に広まってきているグループはACODA(Adult Children of Dysfunctional Family
 Anonymous)ですが、大都市などにはこれ以外のグループもありあます。


 次のステップとしては専門家によるカウンセリングやトレーニングを受けることが有効です。
 自助グループでは自分の人格特徴に対する洞察が深まっても、実際の対人関係技術を変
 えるのはなかなか困難です。
 アサーティブ・トレーニングや心理劇などの集団療法的な方法と、カウンセリングや個人精
 神療法など1対1で行う方法とがあります。専門機関でご相談になることをお薦めします。

自助グループについて              

 自助グループは、アルコール依存症者本人やその家族が作っている団体です。
 日本では、依存症者本人のためのグループとしてアルコホーリクス・アノニマス(AA)と全日
 本断酒連盟(断酒会)が有名です。それぞれミーティングあるいは例会と呼ばれる会合を定
 期的に開き、自分の体験談や考えていることを語ることにより、依存症からの回復を目指し
 ます。
 
 
自助グループの歴史

 AAは1935年、アメリカ合衆国オハイオ州アクロンで、ふたりのアルコール依存症者、ボブ
 とビルが始めた自助グループです。日本には戦後すぐ伝わりましたが、実際に広まっていっ
 たのは1975年頃からです。現在我が国には300を越えるグループが活動しています。
 AAは定期的にミーティングを開き、テーマに沿って自分の体験や考えを語ります。
 またメッセージといって病院や施設に出かけていき、まだ回復していないアルコール依存症
 者へAAへの参加を促す活動も行っています。そのほか全国各地でセミナーやラウンドアッ
 プなどの行事もあります。
 断酒会は1958年に高知と東京で始まりました。
 アルコール依存症者で元社会党高知県本部書記長だった松村春繁は全国行脚をして断酒
 会を拡げ、現在では5万人以上の会員がいます。断酒会の活動は、地域で定期的に開かれ
 る断酒例会と、各地方あるいは全国レベルでの大会からなります。日々の断酒例会はメンバ
 ーの体験発表がその中心で、「例会は体験発表に始まり体験発表に終わる」ということばが
 あるほどです。

 各種大会もやはりその中心はメンバーの体験発表です。

 
自助グループは何故断酒継続に有効か

 1.安心できる場である
  アルコール依存症がほかの疾患と大きく異なることのひとつに、「まわりから理解されにく
  い病気」であることがあります。アルコール依存症になると、どうしても他人に迷惑をかけ
  ることが多いため、周囲の人にはこれを病気とは見ず、道徳的に問題のある人と考える
  ようになります。
  そのため患者さんは自分の不安・苦しみ・悩みを聞いてもらえず、心理的に孤立していき
  ます。このことは飲酒している間はもちろんですし、断酒を始めてからもまわりは「本当に
  酒がやめられるだろうか」と疑いの目で見ることが多いのです。自助グループは同じ体験
  をした人々の集まりですから、アルコール依存症者の悩みはメンバーに直ちに理解され、
  安心感を得ることができます。精神的な安定は、断酒継続におおいに役立ちます。


 2.依存症のことが実感として理解でき、断酒の方法がわかる
  自助グループではメンバーが自分の体験や気持ちを語ります。
  メンバーは実際に依存症の苦しみを経験していますので、その話には迫力があり、
  アルコール依存症がどういう病気かということが真実味をもって理解できます。
  またメンバーの現在の様子を聞くことによって、それまで想像することが難しかった断酒生
  活のイメージがつかめ、具体的な断酒の方法を学ぶことができます。
  これらは病院などで専門家から教わるのとまた違った新鮮さがあります。


 3.初心者もベテランも対等に学びあえる
  断酒の初心者が自助グループで断酒の方法を学べることは当然ですが、長く断酒を続け
  ている患者さんも初心者から学ぶことができます。どんな病気でも同じですが、何年〜何
  十年と経つうちに、どうしても油断が起こってきます。この場合断酒歴の長い患者さんが
  初心者の体験を聞くことにより、断酒に対する決意をあらたにし、ひきつづき回復の道を
  あゆむことができます。


  
自助グループの連絡先

    
*AA日本ゼネラル・サービス・オフィス
    〒171-0014 東京都豊島区池袋4-17-10 土屋ビル4階
    TEL 03-3590-5377 FAX 03-3590-5419

   *AA関東甲信越セントラルオフィス
    〒170-0004 東京都豊島区北大塚3-13-17
    TEL 03-3576-2574 FAX 03-3576-9683

   *断酒会(社団法人 栃木県断酒ホトトギス会)028-662-2687


アルコール問題に関する相談先(栃木県内)